第13回 演題2: MPGN様の糸球体病変を呈したIgG4関連疾患の一例

松隈祐太1)、升谷耕介1)、植木研次1)、土本晃裕1)、清島保2)鶴屋和彦1)、北園孝成1)

1) 九州大学大学院病態機能内科学

2) 九州大学大学院歯学研究院口腔顎顔面病態学

コメンテーター 福岡大学医学部 病理学 准教授 久野 敏 先生

抄録

症例は70歳女性。慢性心不全で前医入院中に潜血を伴う高度の蛋白尿を指摘され、精査目的で当科に紹介入院した。入院時、眼瞼結膜の貧血と中等度の下腿浮腫を認めた。皮膚・関節症状は認めなかった。検尿では尿蛋白 2+(UP/UCr 2.26g/gCr)、潜血 2+であった。血液検査では汎血球減少、腎機能障害(Cr 1.09 mg/dL)、低補体血症を認め、IgG 2407 mg/dL、IgG4 1110 mg/dLとIgG4が著明に上昇していた。なお、抗核抗体、抗DNA抗体は陰性であった。第12病日に経皮的腎生検を施行した。光顕では、間質に好酸球を一部に伴う炎症細胞浸潤を認めたが、IgG4関連疾患(IgG4-RD)に典型的な間質線維化を認めなかった。糸球体はメサンギウム細胞増殖、管内細胞増多、および係蹄の二重化が明らかであり、膜性増殖性糸球体腎炎様を呈していた。光顕で内皮下沈着物も観察され、蛍光抗体法はIgG, IgA, IgM, C3,C1qが係蹄およびメサンギウムに顆粒状パターンで沈着していた。IgG subclassの染色では、糸球体にIgG2,3が優位に沈着しており、IgG4の沈着は分節性に軽度認めるのみであった。唾液腺エコーでは顎下腺にlow echoic massの集簇を認め、口唇生検では、IgG4陽性の形質細胞が高度に浸潤をしていた。第28病日より、PSL30mg/日(0.6mg/kg/日)の投与を開始したところ、腎機能、尿蛋白は徐々に改善し、第52病日に退院、外来でも症状の再燃なく経過している。

 

臨床側からの疑問

  • 本症例において、全身疾患(IgG4-RD)と糸球体病変は一元的に説明がつくか?それとも糸球体病変のみ別の病態によって起きたものか?

このcaseは下記に掲載されました

Membranoproliferazive glomerulonephritis with predominant IgG2 and IgG3 deposition in a patient with IgG4-related disease. 

BMC Nephrol. 2015 Oct 26;16:173.