第13回 演題1: 胸腹部リンパ節腫脹の経過観察中に、検尿異常を伴う腎機能障害を呈した一例
皆川明大1)、酒井理歌1)、福留慶一1)、久永修一1)、岩切太幹志2)、上園繁弘3)、佐藤祐二4)、藤元昭一5)
1) 社会医療法人同心会古賀総合病院 内科
2) 宮崎大学医学部附属病院 第一内科
3) 宮崎県立宮崎病院 内科
4) 宮崎大学医学部付属病院 血液浄化療法部
5) 宮崎大学医学部 血液・血管先端医療学講座
コメンテーター 佐賀大学医学部 病因病態科学 青木 茂久 先生
抄録
患者は63歳男性, 61歳時の定期検診にて偶発的に胸腹部リンパ節腫脹を指摘され、近医血液内科にて画像フォロー中であった。56~63歳時の健康診断では尿潜血(-), 尿蛋白(-)~(+-)と検尿異常は無かったが、Cre: 1.0~1.3 mg/dlと軽度腎機能障害を指摘されていた。平成25年7月(63歳)より血圧上昇と浮腫が出現し、平成25年9月の定期検診で尿蛋白(4+), 尿潜血(3+)の検尿所見とCre: 1.38 mg/dlの腎機能障害を指摘され、当院紹介となった。
入院時、Cre: 1.20 mg/dl(CCr: 68 ml/min)と腎機能障害を認め、尿検査では顕微鏡的血尿と蛋白尿(尿蛋白: 2.08 g/day)を認めた。血清学的にはリウマチ因子上昇を認めたが、抗核抗体、抗DNA抗体、MPO-ANCA、PR3-ANCAは上昇を認めず、低補体血症も認めなかった。血清および尿の電気泳動でも有意な異常所見を認めなかった。
組織学的検索のため、経皮的腎生検を施行した。光学顕微鏡所見では、PAS染色にて34個の糸球体が観察され、そのうち3個は全節性硬化に陥っていた。その他の糸球体は全節性~分節性にメサンギウム細胞増殖があり、一部には結節状のメサンギウム基質増生が認められた。また、基底膜肥厚を認めるとともに、二重化・メサンギウム陥入の所見も一部認め、MPGNを示唆する所見だった。蛍光抗体法検査では、IgG, IgM, C3, C1qが陽性であり、κ鎖がλ鎖よりやや優位に陽性であった。電子顕微鏡では、メサンギウム領域、尿細管基底膜に細顆粒状の沈着物を認めた。その後、血液内科にて濾胞性リンパ腫と診断された。
腎生検所見の解釈、濾胞性リンパ腫との関連について検討いただきたい。
このcaseは下記に掲載されました
BMJ Case Rep. 2016 Feb 23;2016. pii: bcr2016214366. doi: 10.1136/bcr-2016-214366.New-onset haematoproteinuria in a 63-year-old man with intraperitoneal lymph node enlargement.