演題2:『糸球体血管極にPAS染色陽性の構造物を認めたLupus腎炎の一例』
宮崎大学医学部附属病院 腎臓内科
石﨑友梨、麻生久美子、落合彰子、皆川明大、西園隆三、稲垣浩子、菊池正雄、佐藤祐二、藤元昭一
コメンテーター 福岡大学医学部病理学講座 上杉 憲子 先生
症例:51歳、女性
主訴:検尿異常・腎機能障害
病歴:
2009年より肝機能障害を認め、2012年抗核抗体160倍・IgG 1704mg/dlが判明し当院A内科で肝生検が行われ自己免疫性肝炎・非アルコール性脂肪性肝炎と診断された。2016年12月より下腿浮腫・発熱が出現しB病院を受診、低アルブミン血症、汎血球減少と尿蛋白・尿潜血陽性を指摘され同院入院となった。抗核抗体1280倍、抗ds-DNA 358 IU/mLとSLEを示唆する検査値異常を認め12月26日当院C内科入院となった。抗核抗体陽性・免疫学的異常・腎障害・血液学的異常よりSLEと診断され、腎機能障害・ネフローゼ症候群の合併も指摘された(Cre 1.29mg/dL, Alb 2.80g/dL, 尿潜血3+, 尿蛋白4+, 尿蛋白6.2g/日)。年末を挟むため12月26日よりステロイドパルスを含むステロイド治療が開始となり、2017年1月5日に当科紹介となりLupus腎炎疑いとして経皮的腎生検を実施した。
既往歴:26歳慢性甲状腺炎
生活歴:喫煙なし、飲酒なし、アレルギーなし、流産歴なし、栄養補助食品なし
家族歴:父膠原病(詳細不明)・肺癌、母高血圧症
入院時身体所見:BT 37.6℃、BP 158/96 mmHg、皮疹なし、眼瞼結膜貧血あり、口腔内潰瘍なし、甲状腺腫大なし、心音整、両肺に水泡音あり、腹部膨満、リンパ節触知なし、関節腫脹なし、顔面・腹部皮下・両側下腿と足背に浮腫あり
入院時検査所見:(尿検査) 蛋白4+, 潜血3+, RBC 5-9/F,硝子円柱100-999/WF, 顆粒円柱10-19/WF, UP/UCr 17.2g/gCr (血液検査) WBC 3800/µL, RBC 319万/µL, Hb 8.9g/dL, Plt 8.6万/µL, BUN 22mg/dL, Cre 1.29mg/dL, TP 5.61mg/dL, Alb 2.80g/dL, T-cho 183mg/dL, TG 148mg/dL, TB1.1mg/dL, AST 28IU/L, ALT 16IU/L, LDH 483IU/L, ALP 176IU/L, γ-GT 29IU/L, CRP 0.59mg/dL,TSH 5.81µIU/mL, FT3 2.42pg/mL, FT4 0.98ng/dL, IgG 989mg/dL, IgA 403mg/dL, IgM 107mg/dL, C3 35mg/dL, C4 4mg/dL, CH50 14U/mL, 抗核抗体2560倍, 抗ds-DNA抗体399IU/mL, 抗SM抗体陰性, 抗SS-A抗体陰性, 抗SS-B抗体陰性, 抗CLβ2GP1抗体1.2U/mL(<3.5)、抗カルジオリピン抗体8U/mL(<10)、ループスAC 1.09(<1.3) (CT) 胸腹水あり
腎生検所見:
観察糸球体43個、全節性硬化6個、半数以上の糸球体に管内増殖を認め、細胞性半月体、線維細胞性半月体をそれぞれ1個伴う。びまん性全節性に内皮下沈着物、ヒアリン血栓を認める。PAM染色では基底膜の二重化とスパイク形成を認める。間質には巣状の線維化と単核球浸潤を認める。蛍光抗体染色では、IgG、C3、C1qの係蹄顆粒状沈着を認めた。また、糸球体血管極にPAS染色陽性の構造物を認めた。
臨床・病理学的疑問点:
光学顕微鏡でみられた血管極のPAS陽性構造物を病理学的にどう判断(診断)すべきか、この病変が今後の腎予後に及ぼす影響について、ご議論を願いたい。
CEN Case Rep. 2019 Dec 20. doi: 10.1007/s13730-019-00431-2. [Epub ahead of print]
A case of lupus vasculopathy presenting favorable renal outcome.日腎HPから会員ログインでダウンロードできます