第14回 演題2:IgG4関連疾患とCastleman病の鑑別を要した、膜性腎症を合併した紫斑病性腎炎の一例

渡辺麻耶1)2)、井上秀樹3)、實吉 拓3)、安達政隆3)、中山裕史3)、井上武明1)、江田幸政3)、向山政志3)

1) JCHO熊本総合病院腎センター

2) 済生会熊本病院腎・泌尿器センター

3) 熊本大学医学部附属病院腎臓内科

コメンテーター:九州大学大学院医学研究院 病態機能内科学 升谷 耕介 先生

症例は54歳女性。1年3ヶ月前に閉塞性胆管炎疑いで当院消化器内科を受診した際、下部胆管狭小化に加えて両肺野の多発結節影や全身性リンパ節腫大、甲状腺腫大、脾腫などを指摘された。左鼠径リンパ節生検、CTガイド下肺生検を施行され、形質細胞浸潤と線維増生、閉塞性動静脈炎といった所見がみられたことから胆管病変を含めてIgG4関連疾患と診断されたが、増悪した尋常性乾癬に対する治療が優先されたためステロイド治療は延期されていた。3週前から咽頭部違和感、頚部リンパ節腫大を認め、2週前に両下腿に紫斑が出現したため当院皮膚科を受診した。その後尿検査で蛋白(3+)、潜血(3+)、U-TP 4.5g/gCrと大量の蛋白尿を認めたことから当科入院となった。入院時検査所見:WBC 8630、RBC 400万、Hb 9.8g/dL、PLT 40.4万、総蛋白8.8g/dL、Alb 2.1g/dL、BUN 13mg/dL、Cr 0.86mg/dL、CRP 3.19mg/dL、IgG 4079mg/dL(IgG4 263mg/dL)、IgA 822mg/dL、IgM 127mg/dL、C3 84mg/dL、C4 22mg/dL、CH50 42.2U/mL、RF陰性、ANA 40倍、抗ds-DNA抗体16IU/mL。入院翌日に経皮的腎生検を施行した。光顕では、間質に炎症細胞浸潤を巣状に認めたが、線維化はほとんどみられなかった。糸球体にはびまん性に軽度~中等度のメサンギウム細胞増多とメサンギウム基質の増加を認め、癒着を伴う分節性硬化が目立ち、4ヶ所で細胞性半月体形成を認めた。また係蹄壁の肥厚はみられなかったが、Azan染色で係蹄へのデポジット沈着をびまん性に認めた。蛍光抗体法ではメサンギウム領域主体にIgA、C1q、C3の沈着を認め、IgGの沈着を係蹄に沿って顆粒状に認めた。IgGサブクラスの染色ではIgG1、2が優位に沈着し、IgG4は陰性だった。以上より紫斑病性腎炎(GradeⅣb)、膜性腎症(stageⅠ~Ⅱ)と診断し、第18病日よりmPSL 500mg/日×3日間ステロイドパルス療法を施行した後にPSL 40mg/日(0.6mg/kg/日)の投与を開始した。

臨床側からの疑問

1, 間質に特徴的な線維増生は認められなかったが、紫斑病性腎炎や膜性腎症といった糸球体病変を含めてIgG4関連腎臓病と診断してよいか?

2, 血清IL-6値は未測定だがCRP高値、貧血、血小板増多といったCastleman病に特徴的な所見を認めることから、IgG4関連疾患ではなくCastleman病とは考えられないか?