第14回 演題1:CKDを呈しOligomeganephroniaが疑われた成人例
井上 瑛,山口 彩絵,池田 裕貴, 松本 圭一郎,福田 誠,實松 麻衣,岸 知哉,宮園 素明,池田 裕次
佐賀大学医学部附属病院 腎臓内科
コメンテーター:福岡大学医学部 病理学 久野 敏 先生
症例は34歳女性。17歳頃から学校健診で尿蛋白の指摘があった。その頃、40℃の発熱と右腰痛を繰り返しており、近医で感冒として対処されていたが、尿検査や血液検査等は施行されていない。就職後、職場健診でも尿蛋白(3+)、尿潜血(1+)を指摘され、30歳頃からは高血圧症とCr上昇を指摘された。33歳時(2014年3月)に発達障害(ADHD)の診断を受け、また実子3人のうち2人に発達障害とVURを認めた。同年7月にはCTにて右腎萎縮と左腎の代償性肥大を認めたため12月に前医を紹介受診。後腹膜腔鏡下腎生検目的に当院紹介され、2015年4月に入院となった。入院時は尿蛋白(2+)、尿潜血(—)、U-P/Cr 1.46 g/gCr、尿沈渣赤血球 1-4/毎視野、Cr 1.25 mg/dlであった。排尿時膀胱造影にて右腎はVUR 3度、左腎はVUR 1度の所見であった。左腎より腎生検施行し、十分な検体量にも関わらず光顕所見で糸球体数は9個のみ、糸球体径は拡大しており、基底膜の二重化を伴うメサンギウム増殖性腎炎像を認め、一部では糸球体巣状硬化も認められた。糸球体数が少なく、糸球体径の拡大を認めること、発達障害やVURも伴っていることからOligomeganephronia(OMN)が鑑別として考えられた。OMNは胎生期の腎発達異常による糸球体数の減少と残存糸球体の代償性肥大を特徴とする疾患で、幼少期より多飲・多尿などの症状を呈し末期腎不全に至る。本症例は末期腎不全には至っていないが病理所見よりOMNも疑われた。
先天性の尿路異常を伴うOMNを来す疾患範疇に関してご検討下さい。