演題2:C3単独の低補体血症を伴うネフローゼ症候群で発症し、比較的早期に末期腎不全へ至った一例

第22回 演題スライドおよびコメント

落合彰子 1)、皆川明大 2)、岩切太幹志 1)、佐藤祐二 2)、久永修一 1)、藤元昭一 2)
1) 医療法人同心会古賀総合病院 内科
2) 宮崎大学医学部附属病院 腎臓内科

【症例】76 歳男性
【現病歴】過去に検尿異常を指摘されたことはなかった。74 歳より高血圧症の加療を開始。75 歳頃より 軽度下腿浮腫を自覚していたが、腎機能はCre 1.0 mg/dL前後で検尿異常はなかった。76歳(X年)夏の 健康診断で検尿異常を指摘され、近医でも尿蛋白(3~4+)、潜血(3~4+)と検尿異常が持続。10 月頃より 下腿浮腫の増悪と体重増加(約 5kg)を自覚し、同時期より血圧高値(sBP 190 mmHg 程度)となった。Cre(mg/dL) 1.02(5月)→1.23(10月)→1.18(11/15)→1.39(11/29)と腎機能障害は増悪し、低アルブミン血 症(Alb 2.86 g/dL)も顕在化した。腎機能障害を伴ったネフローゼ症候群の精査加療目的に当科に入院した。 【既往歴】中学生:虫垂切除術、73 歳:指節骨骨折、76 歳:両眼白内障手術
【家族歴】姉 2 人:腎疾患で死亡(詳細不明)、父:肺癌
【生活歴】喫煙歴:既喫煙(20-30 代まで 60 本/日)、飲酒歴:ビール 350ml/日、職業:農業 【理学所見】BH 171.8 cm, BW 78.9 kg, BT 36.1°C, BP 160/76 mmHg, PR 53/min, regular, RR 18/min, SpO2 92%(room air)、心音・呼吸音に異常なし、両下腿に圧痕性浮腫あり
【検査成績】<尿検査> 尿蛋白(3+)、潜血(2+)、RBC 10-19/HPF、尿蛋白 5.28 g/日 <血液検査> WBC 5700/μL、RBC 471 万/μL、Hb 14.1 g/dL、Plt 18.9 万/μL、TP 5.4 g/dL、Alb 2.86 g/dL、TC 249 mg/dL、HDL-C 47 mg/dL、LDL-C 167 mg/dL、AST 29 U/L、ALT 15 U/L、BUN 25.1 mg/dL、Cre 1.39 mg/dL(eGFR 39 ml/min./1.73m2)、UA 7.6 mg/dL、LDH 272 U/L、CRP 0.22 mg/dL、IgA 307 mg/dL、IgG 1164 mg/dL、IgM 203 mg/dL、C3 75 mg/dL、C4 17 mg/dL、CH50 33.5 U/mL、抗核抗体・RF・MPO-ANCA・PR3-ANCA・HCV 抗体・HBs 抗原・クリオグロブリン・M 蛋白: 陰性または異常なし 【入院後経過】ネフローゼ症候群に対し、X 年 12 月 5 日経皮的左腎生検を施行。光学顕微鏡所見では観 察糸球体 40 個中、3 個に全節性硬化を認めた。残余の糸球体にはびまん性管内増殖性変化を認め、メサ ンギウム細胞増多と基質の増生、係蹄壁の肥厚および二重化を認めた。蛍光抗体法では C3 沈着を認めた が、他の免疫グロブリンの有意な沈着は認めなかった。C3 単独の低補体血症が遷延していたが、入院後 の炎症反応は陰性で、感染症を示唆する所見・病歴もなく感染関連腎炎は否定的であった。12 月 9 日よ り PSL 30 mg/日(0.5 g/kg/日)を開始し、利尿薬・降圧薬を調整の上退院とした。後日報告された電子顕 微鏡所見では podocyte foot process effacement に加え、内皮下・上皮下領域に microtubular な沈着物 を認めた。検尿所見は改善なく、次第に体液コントロールが困難となり腎機能障害も進行。X+1 年 12 月 に血液透析導入となった。 【疑問点】臨床病理診断と電子顕微鏡でみられた沈着物についてご教授願いたい。