演題1:MGUS(後に多発性骨髄腫に進展)を合併し fibril 様構造物を伴う結節型糸球体硬化症 を呈した糖尿病の一例

福岡東医療センター 腎臓内科 1, 豊資会 加野病院 腎臓内科 2
生島真澄1, 竹内実芳1, 松枝修明1, 永江 洋1, 黒木祐介1, 片渕律子2

第22回 演題スライド及びコメント

症例は 62 歳(腎生検時), 男性

2001 年(57 歳)で糖尿病と診断された.
2002 年(58 歳), A 病院で血糖降下薬開始。コントロール不良のため B 病院に教育入院.

入院中 MGUS と診断:骨髄穿刺;形質細胞 10%, IgG1014mg/dl以後も A 病院に不定期に通院していたが, 血糖コントロールは不良であった.

2007 年 5 月両上下肢の浮腫出現し A 病院受診.HbA1c8.9%, 血清総蛋白 5.2g/dl, アルブミン2.8g/dl したため 6 月当科に紹介入院.
白血球 5900/μl, 赤血球 3.62X104/μl, Hb 10.8g/dl, 血小板 28.3X104/μl, BUN15.4mg/dl, Creatinine1.1mg/dl,IgG1176mg/dl,IgA103.1mg/dl,IgM40.9mg/dl, 蛋白分画 (alb56.2%, α1 glob 4.1%, α2 glob 8.2%, β glob 11.2%, γ 20.3%), 補体正常, 各種自己抗体陰性, 尿蛋白2+, 尿潜血2+, 尿中赤血球10-19/HPF, 尿蛋白/クレアチニン比5.8g/gcr, 畜尿尿蛋白1.4g/日,尿中 BJ-λ, 血中 IgG-λ M 蛋白検出. 十二指腸生検:アミロイド沈着なし, 骨髄穿刺:形質細胞3.4%のため MGUS と診断. 網膜症なし, 腎生検では採取糸球体は 12 個, うち 2 個は全節性硬 化を呈していた. のこる 10 個の糸球体には結節を認め, 4 個に微小血管瘤, 1 個に滲出性病変を 認めた. Congo-red 染色は陰性であった. 蛍光抗体法では IgG と λ が結節に一致して染色されて いた. 電顕では基底膜の肥厚, メサンギウム基質の増加のほか, メサンギウムや基底膜内皮下にFibril 様構造物を認めた. 腎病理の Dr に電顕所見についてコンサルとしたところ, 典型的なDiabetic fibrillosis とのコメントであった.

その後, 腎機能障害は進行し 2011 年 9 月血液透析に導入し, 維持透析を受けていた. 2017年から多発脊椎骨折を認め, 骨髄穿刺にて骨髄腫瘍細胞52%のため多発性骨髄腫と診断. 8 月福岡東医療センター血液内科に入院. 多発性骨髄腫 IgG-λ 型, D&S IIIB, ISS II と診断。Bortezomib+Dexamethason 療法が開始された.
【疑問点】
1. MGUS(IgG-λ)を合併していたこと, 網膜症がなかったこと, 蛍光抗体法で IgG と λ 鎖が結節

に一致して沈着していたこと, 電顕で Fibril がみられたこと, MGUS と診断されて 15 年後に 多発性骨髄腫を合併しており, 腎生検診断は糖尿病性糸球体硬化症で本当によかったか?Fibrillary glomerulopathy の可能性は否定できるのか?

2. Diabeticfibrillosisは存在するのか?その本態は何か?