第15回 演題2:尿細管間質性腎炎を伴った微小変化型ネフローゼ症候群の一例
阿部 伸一1)、太田 祐樹1)、牟田 久美子1)、北村 峰昭1)、川﨑 智子1)、浦松 正1)、廣瀬 弥幸1)、小畑 陽子1)、田畑 和宏2)、福岡 順也2)、西野 友哉1)
1)長崎大学病院腎臓内科、2)同病理診断科
コメンテーター:熊本大学医学部附属病院 病理部教授 三上 芳喜 先生
【症例】60歳 女性
【既往歴】30歳右乳癌 (右乳房全摘術)、乳癌転移 (40歳時:右肺、56歳時:右鎖骨、当院外科でホルモン療法:58歳時 (2014年8月) までアナストロゾール、2014年9月からフルベストラントで加療。2013年1月からデノスマブを使用)
【病歴】健診等で検尿異常を指摘されたことはなかった。40歳時 (1998年) より右乳癌の肺、鎖骨転移に関して当院外科で加療され、同時期よりロキソプロフェンナトリウムを2~3錠/週常用していた。2015年12月初旬より感冒様症状のため、NSAIDsを含む総合感冒薬を数種類内服した。2016年1月2日より、右上肢を中心にした全身浮腫、5kgの体重増加を認め1月5日当院外科を受診した。元来Cr 0.7m g/dL前後で推移していたが、Cr 1.15 mg/dLと腎機能の低下を認めた。フロセミド40 mg/日を処方されたがその後も全身浮腫は改善せず、同月13日に再診、Cr 1.85 mg/dlと腎機能のさらなる低下があり、TP 4.5 g/dL、Alb 1.2 g/dL、尿蛋白 12.24 g/gCrでありネフローゼ症候群の診断にて当科紹介入院となった。入院時検査所見:BUN 38 mg/dL, Cr 1.62 mg/dL, 血尿(-), 尿中b2-MG 15,132 mg/L, 尿NAG 43.3 U/L, SI 0.31。翌日に腎生検を施行したところ、光顕所見では糸球体に明らかな病変は認めなかった。間質の20%程度にリンパ球を主体とした細胞浸潤を認めた。また20%程度の領域で線維化を認め、一部は浮腫状であった。蛍光抗体法では、有意な免疫グロブリンの沈着を認めなかった。電子顕微鏡ではび漫性に足突起の癒合を認めた。ネフローゼ症候群の原疾患として、微小変化型ネフローゼ症候群と考えPSL 40 mg/日内服を開始した。治療開始後17日で、尿蛋白は蓄尿で23 g/日から21 g/日と改善は認めていない。
【腎生検所見の疑問点】
- 間質性腎炎の原因としてNSAIDsによる間質性腎炎を考えたが、他にどの様な鑑別疾患が考えられるか?
- 本症例は微小変化型ネフローゼ症候群に間質性腎炎を合併していると考えているが、この両病変はNSAIDsによる薬剤性として一元的に説明可能なのか?