第16回 演題2:ネフローゼ症候群と腎機能障害を伴った、IgA沈着を伴う管内増殖性腎炎の1例

山下理沙, 落合彰子, 黒木聡子, 皆川明大, 山下靖宏, 福田顕弘, 中川秀人, 岩坪修司, 佐藤祐二, 北村和雄, 藤元昭一

宮崎大学医学部附属病院 第一内科

コメンテーター  済生会福岡総合病院 病理診断科 主任部長 加藤 誠也 先生

患者:72歳男性。既往歴:高尿酸血症。現病歴:2009年から2016年1月までは尿潜血(+)、尿蛋白(-)で経過し、腎機能も正常であった。2016年2月より明らかな誘引なく、高血圧、浮腫と体重増加が出現し、2月23日前医受診。尿蛋白(4+), 尿潜血(3+), RBC 10-19/hpf, Up/Ucr 10.86 g/gCrと腎機能障害(Cre 2.89 mg/dL), 低アルブミン血症(Alb 2.6 mg/dL)を指摘され、2月25日当院に紹介され入院。

入院時現症:150/80 mmHg(降圧薬服用下)、両下腿を中心に全身浮腫あり。入院時検査:蛋白尿10.3g/day、Cre 2.18 mg/dL、TP 5.36 g/dL, Alb 2.49 g/dL。IgG低下とIgA, IgM上昇 (IgG 551 mg/dL, IgA 452 mg/dL, IgM 308 mg/dL)、補体は正常範囲、抗核抗体, リウマトイド因子, MPO-ANCA, PR3-ANCAは陰性。M蛋白なし、HCV抗体, HBs抗原は陰性。

ネフローゼ症候群に対し、Prednisolone (PSL)50mg/dayと利尿剤による治療を先行後、3月3日に第1回目腎生検を施行。光学顕微鏡所見では、25個の観察糸球体のうち3個は全節性硬化、2個に細胞性半月体形成、他はびまん性・全節性にメサンギウム融解を伴う管内細胞増殖を認め、一部内皮下に好酸性沈着物がみられた。間質では線維化と尿細管萎縮を認め、細動脈以上の血管に明らかな異常なし。蛍光抗体法染色ではメサンギウム領域にIgA、IgG、IgMとC3の沈着を認めた。1ヶ月 間PSL 50mg/dayの初期治療後の尿蛋白は4〜6g/日で経過。腎機能障害、血清アルブミン値に増悪はないものの、治療効果は不十分であった。4月21日(第57病日)に治療効果判定を目的として第2回目腎生検を施行。当初に認めた増殖性変化は改善傾向であると判断し、ステロイド薬を漸減し、5月18日退院した(Cre 1.79 mg/dL, Alb 1.80 g/dL, 尿潜血(3+) RBC 30-49 /hpf, 尿蛋白(3+), 尿蛋白5.6 g/day)。現在、前医で外来フォロー中である。

病理学的に①第1回腎生検時の病理診断、②第2回腎生検時の病理診断及びステロイド治療に対する反応性の有無を検討いただき、臨床所見と併せて、鑑別診断および今後の治療選択についてお教えいただきたい。