第18回 演題1 :高尿酸血症、痛風関節炎の病勢悪化に伴い急性増悪した間質性腎炎の一例

三浦 朗子1)、古閑 和生1)、原田 健司1)、村田 健一郎2)、土本 晃裕3)、金井 英俊1)

1)平成紫川会 小倉記念病院 腎臓内科、2)同 病理科、3)九州大学病院機能内科学 腎臓研究室

コメンテーター:鹿児島大学 医学部腎臓内科 德永 公紀 先生

【症例】65歳 男性

【既往歴】高血圧、高尿酸血症

【現病歴】X-15年頃から高血圧と高尿酸血症の指摘があったが未治療であった。腎機能はX-1年11月に近医でCre 2.0 mg/dlの慢性腎臓病を指摘され、X年9月にはCre 3.5 mg/dlと増悪し、転居に伴いCKDG5の状態で当科紹介初診となった。初診時、BUN 59.2 mg/dl, Cre 3.80 mg/dl, UA 10.5 mg/dlで、尿所見異常は認めなかった。腎エコーでは両腎ともに皮質菲薄化と腎萎縮、辺縁凹凸を認め腎硬化症や痛風腎を原疾患とした慢性経過の腎機能障害を考えた。同年10月に両下肢痛のため歩行困難となり緊急入院。尿酸12.1 mg/dlと高値で、両側母趾、左足関節に発赤・熱感が出現し、レントゲン写真では右母趾中足骨遠位、右手関節の舟状骨遠位、左中指中節骨に痛風結節を疑う欠損像を認め、左中指に痛風結節認め痛風関節炎と診断した。この時Cre 4.35mg/dlと短期間で急速に腎障害の進展がみられたが尿所見異常なく、NSAIDsや抗菌薬、造影剤の使用はなく好酸球上昇もなかった。腎機能障害のため痛風関節炎はアセトアミノフェンで加療開始したが消退せず、関節炎に対して10/29-PSL10mg内服開始したところ関節痛は軽快、しかしPSLの減量に伴い関節炎の悪化を繰り返したため、PSL5~10㎎の内服を3か月間継続したところ、X+1年の定期受診時にBUN 13.5 mg/dl、Cre 1.79 mg/dlと著明に腎機能改善がみられ、UA も3.9mg/dlまで低下した。その後腎機能障害再増悪なく、PSL内服が奏功する腎機能障害であったと考え、病態把握、今後の治療方針決定のために2月に経皮的腎生検を行った。

糸球体を16個観察、13個の硬化糸球体を認めた。非硬化糸球体にメサンギウム基質の増加や細胞増殖、管内細胞増多、管内細胞増多や分節性病変や糸球体基底膜の形態異常はなかった。

光顕所見では間質に中等度の細胞浸潤を認め、間質の線維化と尿細管萎縮をそれぞれ中等度認めた。蛍光抗体法では免疫グロブリンや補体の有意な沈着を認めず、慢性間質性腎炎の所見として矛盾しなかった。

【疑問点】

  1. 高尿酸血症、痛風関節炎の増悪時に急性増悪した腎機能障害であり、特にNSAIDs内服、その他間質性腎炎をきたす薬剤、疾患の合併はなかった。病理所見で尿酸結晶は認めなかったが、痛風腎の急性増悪と考えてよいか。他どのような鑑別疾患が考えられるか。
  2. 当院受診時、すでに腎萎縮や辺縁凹凸があり腎形態から慢性経過と考えていたがPSL10㎎とごく少量が腎機能障害に著効した。少量ステロイドにより尿酸結晶が溶けて尿細管、間質の直接障害が改善したと考えられるのか。もしくはそれ以外にPSLが著効した理由があるか。
  3. 病理学的に高尿酸血症かそれ以外の疾患が原因の間質性腎炎かを鑑別することはできるか。